下腹壁動静脈の外側から、鼠径部にヘルニアの膨らみが現れます。

精巣へ向かう血管（精巣動静脈）や輸精管が通る「鼠径管」を通じて、腸や脂肪が飛び出します。

胎生期に精巣が腹腔内から陰嚢へ下降する際にできる通り道（鞘状突起）が、大人になっても閉じずに残ることが主な原因です。

若年層にもみられますが、小児と中年以降の男性で多く発生する二峰性の分布が特徴です。

脱出した内容物が陰嚢まで達することもあり、陰嚢ヘルニア（陰嚢内に腸が入る状態）として進行することもあります。

下腹壁動静脈の内側にある「ヘッセルバッハ三角」という腹壁の弱い部分から、腸や脂肪が直接腹壁を押し破って飛び出します。

加齢や筋力低下、立ち仕事、重いものを持つ作業、慢性的な咳や便秘などで腹圧が長期間かかることが主な原因です。

陰嚢まで到達することは少なく、膨らみの位置は比較的内側で浅いのが特徴です。

外鼠径ヘルニアと比較して、高齢者に多く、両側性に生じることもあります。

太ももの付け根（大腿部）の内側で大腿動静脈という大きな血管が通る「大腿裂孔」という細い隙間から腸や脂肪が飛び出します。

鼠径ヘルニアよりもさらに下の位置に膨らみができるのが特徴です。

大腿裂孔は通り道が狭く、脱出した腸が締めつけられやすいため、嵌頓（かんとん）を起こすリスクが非常に高いです。
（分かったら早めの手術が必要です）

急な腹痛や吐き気、嘔吐などの症状が現れ、腸閉塞や腸壊死に進行するおそれもあるため、緊急手術が必要になることがあります。

他の鼠径部ヘルニアと異なり、高齢の痩せた女性に多くみられます。