鼠径ヘルニアは高齢者でも手術すべき?手術しない場合の危険性とは
神奈川県川崎市にある鼠径ヘルニア専門クリニック「神奈川そけいヘルニア日帰り手術クリニック 川崎武蔵小杉」です。
高齢者の鼠径ヘルニアについて、「年齢が高いから手術は避けたほうがよいのではないか」と悩まれる方は少なくありません。しかし、鼠径ヘルニアは自然に治癒する疾患ではなく、放置すると嵌頓(かんとん)などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
本記事では、高齢者が手術を受けるべきかどうかの判断基準をはじめ、手術を行わない場合のリスクや、経過観察が選択されるケースについて分かりやすく解説します。
高齢者の鼠径ヘルニアは手術しない選択もあるのか
高齢者の鼠径ヘルニアについて、「年齢が高いから手術は避けたほうがよいのではないか」と不安を抱かれる方は少なくありません。しかし、年齢のみを理由に手術を行わないと判断するのは適切ではありません。
鼠径ヘルニアは自然に治癒する疾患ではなく、根治を目指すには手術が必要です。放置すると、重篤な合併症である嵌頓(かんとん)を発症する可能性があります。
一方で、心疾患や呼吸器疾患などの基礎疾患があり、麻酔や手術のリスクが高いと判断される場合には、医師の管理下で経過観察が選択されることもあります。その際は、嵌頓のリスクに十分注意しながら、定期的な診察によって状態を確認していくことが前提となります。
高齢であることを理由に「手術はしない」と一律に判断するのではなく、全身状態や併存疾患の有無、症状の程度、生活の質への影響、嵌頓(かんとん)のリスクなどを総合的に評価したうえで、手術の必要性と安全性を慎重に検討することが重要です。
鼠径ヘルニアとはどのような病気か

鼠径ヘルニアとは、お腹の中の腸や脂肪が、足の付け根(鼠径部)の腹壁の弱い部分から皮下に飛び出してしまう病気です。
医学的には「鼠径ヘルニア」と呼びますが、一般には「脱腸」として知られています。
代表的な症状は、鼠径部に現れるふくらみです。このふくらみは、立っている時や咳をした時など腹圧がかかる場面で目立ちやすく、横になると自然に引っ込んだり、手で押すと戻ったりするのが特徴です。初期の段階では痛みを伴わないことも多く、違和感のみで経過する場合もあります。
鼠径ヘルニアは女性よりも男性に多く、とくに中高年の男性に多い病気です。 男性では、精索(睾丸へつながる管)が通る構造のため、もともと足の付け根(鼠径部)に弱くなりやすい部分があります。さらに、加齢による筋力低下や、慢性的な咳や便秘などで腹圧がかかり続けることも、発症の一因と考えられています。
手術しない場合に起こりうる危険性
鼠径ヘルニアを手術せず経過観察とした場合、最も注意すべき合併症が「嵌頓」です。
嵌頓とは、脱出した腸などの臓器が元の位置に戻らなくなった状態を指します。強い痛みや腹部膨満、吐き気・嘔吐などを伴うことがあり、放置すると腸閉塞や腸壊死へ進行する危険があります。

とくに高齢者では症状の訴えが明確でないことや、受診が遅れることもあり、より注意が必要です。嵌頓を発症した場合は緊急手術が必要となりますが、緊急手術は身体への負担が大きく、合併症のリスクも高くなることが知られています。
また、嵌頓を起こしていなくても、ヘルニアが徐々に増大し、日常生活に支障をきたす可能性もあります。痛みや違和感の増強によって活動量が低下し、結果として全身状態の悪化につながることもあります。
経過観察が行われるケースとは
鼠径ヘルニアの根本的な治療は手術です。しかし、心疾患や呼吸器疾患などの基礎疾患があり、麻酔や手術のリスクが高いと判断される場合には、経過観察が選択されることがあります。
たとえば、重度の心不全や重症の虚血性心疾患、コントロール不良の不整脈、重度の慢性閉塞性肺疾患などがある場合には、全身麻酔や手術そのものが大きな身体的負担となる可能性があります。このような状況では、ヘルニアの症状や嵌頓のリスクと、手術に伴う全身的リスクを慎重に比較し、手術を行わず経過をみる判断がなされることもあります。
ただし、経過観察を選択した場合でも、嵌頓のリスクがなくなるわけではありません。急な強い痛みや、ふくらみが戻らなくなるなどの変化がみられた場合には、速やかに医療機関を受診する必要があります。
高齢者の鼠径ヘルニア手術の注意点
高齢者に対する鼠径ヘルニア手術では、全身状態の評価が重要です。
安全に手術を行うためには、心疾患や呼吸器疾患、糖尿病、腎機能障害を伴う腎疾患などの持病があるかどうか、またそれがきちんとコントロールされているかを事前にしっかり確認することが大切です。術前には、必要に応じて血液検査や心電図、画像検査などを行い、麻酔や手術に無理なく耐えられる状態かどうかを慎重に判断します。
麻酔方法についても、全身麻酔が可能かどうか、あるいは全身状態によっては局所麻酔のほうが適しているかを、患者さん一人ひとりの状態に合わせて慎重に検討します。近年は麻酔管理が大きく進歩しており、高齢の方でも安全性に十分配慮した体制で手術を行うことが可能になっています。さらに、術後の回復を見据えた管理も重要です。術後の痛みを適切にコントロールし、肺炎や血栓症などの合併症を予防するよう努めます。
高齢の方の手術では、特に外科医と麻酔科医が連携し、術前から術後まで一貫した体制で管理を行うことが大切です。
まとめ|年齢だけで判断せず専門医に相談を
高齢者の鼠径ヘルニアにおいて、「年齢が高いから手術は避けるべき」と一律に判断するのは適切ではありません。鼠径ヘルニアは自然に治癒する疾患ではなく、放置すれば嵌頓をはじめとする重篤な合併症を引き起こす可能性があります。とくに嵌頓を発症した場合には緊急手術が必要となり、身体への負担も大きくなります。
一方で、重度の心疾患や呼吸器疾患などを有し、麻酔や手術のリスクが高いと判断される場合には、慎重に経過観察を選択することもあります。ただし、その場合でも定期的な診察を継続し、急な症状変化があれば速やかに対応できる体制を整えておくことが前提となります。
大切なのは、年齢のみで判断するのではなく、全身状態や症状の程度、生活の質への影響、将来的なリスクを総合的に評価し、専門医と十分に相談したうえで治療方針を決定することです。



