鼠径ヘルニア手術後の便秘やいきみは大丈夫?専門書執筆医が解説
神奈川県川崎市にある鼠径ヘルニア専門クリニック「神奈川そけいヘルニア日帰り手術クリニック 川崎武蔵小杉」です。
鼠径ヘルニア、いわゆる脱腸の手術を受ける患者さんから、
「手術後にトイレでいきんでも大丈夫ですか?」
「便秘になると再発しませんか?」
「便が出ないときはどうすればよいですか?」
「いきむとメッシュがずれませんか?」
というご質問をいただくことがあります。
鼠径ヘルニアは、お腹の壁の弱い部分から腸や脂肪などが出てくる病気です。そのため、術後に便秘になったり、トイレでいきんだりすると、「またヘルニアが出てしまうのではないか」と不安になる方は少なくありません。
結論からいうと、手術後に排便すること自体は問題ありません。
また、通常の排便や軽いいきみだけで、すぐに再発したり、メッシュがずれたりするわけではありません。
ただし、術後早期に強く長時間いきむことは、痛みや腫れ、違和感が強くなる原因になることがあります。
そのため、鼠径ヘルニア手術後は、便秘を予防し、できるだけ無理なく排便できる状態を整えることが大切です。
今回は、鼠径ヘルニア手術後の便秘やいきみについて、専門書執筆医の立場からわかりやすく解説します。
鼠径ヘルニア手術後に便秘になりやすい理由
鼠径ヘルニア手術後は、普段より便秘になりやすくなることがあります。
主な理由としては、
- 手術当日の食事量や水分量が少なくなる
- 麻酔の影響で腸の動きが一時的に弱くなる
- 術後の活動量が減る
- 痛みで体を動かしにくくなる
- 痛み止めの影響で便秘になりやすくなる
- 「いきむのが怖い」と感じて排便を我慢してしまう
などがあります。
術後1〜2日便が出ないだけで、すぐに大きな問題になるとは限りません。
ただし、便秘が続くと便が硬くなり、排便時に強くいきみやすくなります。
そのため、術後は早めに便秘を予防する意識を持つことが大切です。
トイレでいきむと再発しますか?
患者さんが特に心配されるのが、
「トイレでいきんだら再発しませんか?」
という点です。
通常の排便や、軽くお腹に力が入る程度で、すぐに鼠径ヘルニアが再発するわけではありません。
成人の鼠径ヘルニア手術では、多くの場合、メッシュを使って弱い部分を補強します。日常生活の中で少し腹圧がかかっただけで、すぐに修復部が壊れたり、メッシュがずれたりするものではありません。
ただし、術後早期は手術した部位に炎症や腫れが残っている時期です。
この時期に、
- 長時間トイレで強くいきむ
- 息を止めて力む
- 硬い便を無理に出そうとする
- 排便時の痛みを我慢して踏ん張る
ことは避けた方が安心です。
術後の排便では、「少し力が入ること」よりも、「強く長時間いきみ続けること」を避けることが大切です。
術後に便が出ないときの対策
手術後に便が出ないと、不安になる方もいます。
まずは、次のことを意識してください。
- 水分をこまめにとる
- 消化のよい食事から始める
- 食事量を少しずつ戻す
- 無理のない範囲で歩く
- 便意を我慢しない
- 長時間トイレに座り続けない
水分が不足すると便が硬くなり、排便時にいきみやすくなります。
帰宅後は、吐き気がなければ、水やお茶を少しずつこまめにとりましょう。
また、体調が安定していれば、室内を歩く、トイレに行く、短時間の散歩をするなど、無理のない範囲で体を動かすことも大切です。
一方で、便意がないのに長時間トイレに座って、無理に出そうとすることは避けましょう。
便秘薬は使ってもよい?
便秘が続く場合には、便をやわらかくする薬や便秘薬を使用した方がよいことがあります。
ただし、自己判断で強い下剤を多く使ったり、下痢になるほど薬を使ったりすることは避けてください。
特に、
- 高齢の方
- 腎臓病がある方
- 心臓病がある方
- 普段から便秘薬を使っている方
- 複数の薬を内服している方
- 下痢をしやすい方
では、医師や薬剤師に相談すると安心です。
術後は「便秘を避けること」も大切ですが、「下痢になりすぎないこと」も大切です。
便秘薬は、必要に応じて適切に使用しましょう。
便秘以外で腹圧がかかりやすい動作
腹圧がかかるのは、排便時だけではありません。
術後早期は、次のような動作にも注意が必要です。
- 重いものを持ち上げる
- 強く咳き込む
- くしゃみを繰り返す
- 勢いよく起き上がる
- 高重量の筋トレをする
- 長時間中腰で作業する
- 息を止めて力む
これらの動作を完全に避ける必要はありませんが、術後早期は無理をしないことが大切です。
咳が強い方、便秘が続いている方、排尿時に強くいきむ方は、手術前から相談しておくと安心です。
医療機関に相談した方がよい症状
術後の便秘は、多くの場合、生活の工夫や薬で対応できます。
ただし、次のような症状がある場合には、自己判断で様子を見すぎず、医療機関へ相談してください。
- 数日間便が出ない
- 強くいきまないと便が出ない
- お腹の張りが強い
- 吐き気や嘔吐がある
- 腹痛が強い
- 発熱がある
- 足の付け根の腫れが急に大きくなった
- 痛みが時間とともに強くなる
- 傷が赤く腫れている
- 傷から膿や出血がある
- 排尿しにくい
特に、強い腹痛や吐き気、嘔吐を伴う場合には、早めの受診が必要になることがあります。
「これは様子を見てよいのか」と迷う場合には、無理に我慢せず相談しましょう。
手術前から便秘がある方は伝えてください
普段から便秘がある方は、初診や手術前の診察で伝えておくことをおすすめします。
便秘が強い方では、術後にさらに便が出にくくなることがあります。
特に、
- 普段から便秘薬を使っている
- 数日に1回しか便が出ない
- 強くいきまないと出ない
- 硬い便が多い
- 排便時に強い痛みがある
という方は、手術前に医師へ伝えてください。
手術前に便秘の状態を共有しておくことで、術後の過ごし方や便秘対策を相談しやすくなります。
当院での考え方
私は20年以上にわたり鼠径ヘルニア診療に携わり、これまで3500件以上の鼠径ヘルニア手術に関わってきました。
また、内視鏡外科学会技術認定医(ヘルニア)として診療を行うとともに、『おさえておきたい腹腔鏡下鼠径部ヘルニア修復術のすべて』の執筆にも携わりました。
その経験から感じるのは、鼠径ヘルニア手術では、手術そのものだけでなく、術後の生活上の不安を減らすことも大切だということです。
便秘や排便時のいきみは、患者さんが心配しやすい内容ですが、診察時には遠慮して聞きにくいこともあります。
当院では、術後の痛み、腫れ、仕事復帰、運動再開だけでなく、排便や便秘に関する不安についても、できるだけ分かりやすく説明するようにしています。
鼠径ヘルニア手術後の便秘やいきみは、早めに対策することで不安を減らしやすくなります。
よくある質問
Q. 鼠径ヘルニア手術後、トイレでいきんでも大丈夫ですか?
通常の排便や軽いいきみで、すぐに再発するわけではありません。
ただし、術後早期に強く長時間いきむことは、痛みや腫れ、違和感が強くなる原因になることがあります。
Q. 手術後に便が出ないときはどうすればよいですか?
水分をこまめにとり、消化のよい食事から始め、無理のない範囲で体を動かしてください。
数日便が出ない、お腹の張りが強い、吐き気や腹痛がある場合は、医療機関へ相談してください。
Q. 便秘でメッシュがずれることはありますか?
通常の排便や軽いいきみだけで、すぐにメッシュがずれることは一般的ではありません。
ただし、強い腹圧を繰り返すことは、痛みや違和感の原因になることがあります。
Q. 便秘薬は使ってもよいですか?
便秘が続く場合は、便秘薬を使用した方がよいことがあります。
ただし、持病や内服薬によって適した薬が異なるため、自己判断で増量せず、医師や薬剤師に相談してください。
まとめ
鼠径ヘルニア手術後に排便すること自体は問題ありません。
通常の排便や軽いいきみだけで、すぐに再発したり、メッシュがずれたりするわけではありません。
ただし、術後早期に強く長時間いきむことは、痛み、腫れ、違和感が強くなる原因になることがあります。
そのため、術後は便秘を予防し、できるだけ無理なく排便できるようにすることが大切です。
水分をこまめにとる、食事を整える、無理のない範囲で歩く、便意を我慢しない、必要に応じて便秘薬を相談することが、術後の不安を減らすことにつながります。
鼠径ヘルニア手術後の便秘やいきみは、我慢しすぎず、早めに対策することが大切です。
便秘が続く方、排便時のいきみが不安な方、手術後の生活について詳しく知りたい方は、診察時にご相談ください。
鼠径ヘルニアは当院までご相談ください

神奈川そけいヘルニア日帰り手術クリニック 川崎武蔵小杉は、鼠径ヘルニアの治療に特化した日帰り手術専門クリニックです。腹腔鏡による低侵襲手術を標準治療とし、身体への負担を抑えながら、手術当日にご帰宅いただける体制を整えています。
執刀は、鼠径ヘルニア治療において豊富な臨床経験と学術実績を有する星野明弘院長が担当し、診断から手術、術後フォローまでを一貫して行っています。
受診予約は、お電話またはWeb予約にて承っております。
鼠径ヘルニアや鼠径部の症状でお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください。



