鼠径ヘルニア手術で本当に大切なのは再発率だけではない|術後の慢性疼痛と手術の質の関係
神奈川県川崎市にある鼠径ヘルニア専門クリニック「神奈川そけいヘルニア日帰り手術クリニック 川崎武蔵小杉」です。
鼠径ヘルニア(脱腸)の手術を検討されている患者さんの多くは、
- 再発しないか
- 傷は小さいか
- 日帰りでできるか
- 仕事に早く復帰できるか
といった点を気にされます。もちろんこれらは重要です。しかし私が患者さんにぜひ知っていただきたいのは、「手術が成功した=再発しないこと」だけではないということです。
実際には、術後に痛みや違和感が長く続かず、これまで通りの日常生活を送れることも同じくらい重要です。
今回は、鼠径ヘルニア手術の質と術後の慢性疼痛の関係について解説します。
鼠径ヘルニア手術で本当に怖いものとは?
患者さんが最も心配されるのは「再発」かもしれません。確かに再発は避けなければならない重要な問題です。
しかし実際には、手術後に長期間痛みや違和感が続く「慢性疼痛」も、患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響を与える可能性があります。
再発していなくても、
- 歩くと違和感がある
- 運動をすると痛む
- 下着が当たるだけで気になる
- 長時間座ると不快感がある
といった症状が続けば、患者さんにとって満足できる結果とはいえません。
そのため現在の鼠径ヘルニア治療では、「再発させないこと」と「慢性疼痛を減らすこと」の両方が重要視されています。
慢性疼痛とは?
一般的に、手術から3か月以上経過しても続く痛みを慢性疼痛と呼びます。
鼠径ヘルニア手術後の慢性疼痛の頻度は高くありませんが、一度生じると患者さんの日常生活に大きな影響を与えることがあります。
多くは軽度な違和感ですが、中には仕事や運動に支障をきたすケースもあります。
そのため現在の鼠径ヘルニア治療では、再発率だけでなく、「慢性疼痛をいかに減らすか」も重要なテーマとなっています。
しかし、日常生活の中で違和感や痛みが続くことで、運動や仕事、趣味に影響することがあります。
そのため近年の鼠径ヘルニア治療では、「再発率」だけでなく「術後の生活の質(QOL)」も重視されるようになっています。
なぜ慢性疼痛が起こるのか
慢性疼痛の原因は一つではありません。
- 神経への刺激や損傷
- 術後の炎症
- 瘢痕組織の形成
- メッシュによる違和感
など、さまざまな要因が関与すると考えられています。
もちろん、どれだけ丁寧に手術を行っても一定の確率で起こる可能性はあります。
しかし、そのリスクをできるだけ減らすために重要なのが手術の質です。
手術の質は患者さんから見えにくい
患者さんがクリニックを選ぶ際に確認できるのは、
- ホームページ
- 口コミ
- 立地
- 費用
などが中心です。
一方で、本当に重要な「手術の質」は患者さんからは見えません。
手術室の中で、
- どのように剥離しているのか
- 神経をどのように温存しているのか
- メッシュをどのように展開しているのか
は外からは分からないからです。
しかし、その見えない部分こそが術後の結果に大きく影響します。
実は手術の質が慢性疼痛に大きく関係する
慢性疼痛には患者さんの体質や炎症反応など、手術だけではコントロールできない要素もあります。
一方で、手術中の操作によって減らせるリスクも存在します。
だからこそ、現在の鼠径ヘルニア手術では再発率だけでなく、術後の痛みや違和感をいかに減らすかが重視されています。
鼠径ヘルニア手術では、単にメッシュを入れれば良いわけではありません。
例えば、
- 神経の位置を正確に理解する
- 必要以上の組織損傷を避ける
- 丁寧な剥離操作を行う
- 確実な止血を行う
といった細かな配慮が術後の痛みの軽減につながると考えられています。
手術中には患者さんには見えない多くの工程がありますが、その一つ一つの積み重ねが術後の結果に影響します。
メッシュは「入れること」より「どう広げるか」が重要
現在の腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術ではメッシュを使用することが標準治療となっています。
しかし重要なのは、メッシュを入れることではなく、適切に展開することです。
メッシュにしわや折れ曲がりが残ると、十分な補強が得られないだけでなく、違和感や慢性疼痛の原因となる可能性があります。
実際に、折れ曲がったメッシュが塊状になった「meshoma(メッシュオーマ)」が慢性疼痛に関与することが報告されています1)。
もちろん、すべての慢性疼痛がmeshomaによって起こるわけではありません。しかし、メッシュの展開状態が術後の違和感や疼痛に影響する可能性があることから、現在でも重要な概念として認識されています。
そのため私は手術の際、メッシュが腹膜前腔で自然に広がり、十分な範囲を覆っていることを細かく確認しています。
患者さんから見えない部分ですが、このような細かな積み重ねが術後の快適さにつながると考えています。
手術時間が短ければ良い手術とは限らない
患者さんの中には、「手術時間が短い医師ほど上手なのでは?」と思われる方もいらっしゃいます。確かに無駄のない手術は重要です。
しかし、安全確認や止血確認、神経損傷の予防、メッシュ展開の確認などを丁寧に行うためには一定の時間が必要です。
重要なのは手術時間そのものではなく、必要な手順が適切に行われているかです。
なぜ私は手術の質にこだわるのか
私は20年以上にわたり鼠径ヘルニア診療に携わり、これまで3000件以上の手術に関わってきました。
また、内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)を取得し、出版社からの依頼を受けて『おさえておきたい腹腔鏡下鼠径部ヘルニア修復術のすべて』を執筆しました。
手術を教える立場になると、
- なぜその操作を行うのか
- なぜその位置まで剥離するのか
- なぜその位置にメッシュを展開するのか
を論理的に説明する必要があります。
さらに、
- どうすれば再発を防げるのか
- どうすれば慢性疼痛を減らせるのか
- どうすれば患者さんが快適に日常生活へ戻れるのか
まで考えなければなりません。
私はこうした経験を通じて、再発率だけでなく、術後の痛みや違和感まで含めた「手術の質」が重要であると考えるようになりました。
私自身、手術を受ける患者さんにとって本当に大切なのは、「手術が終わること」ではなく、その後の人生を快適に過ごせることだと考えています。
そのため私は、再発率だけでなく、術後の痛みや違和感をできる限り減らすことにもこだわって手術を行っています。
まとめ
鼠径ヘルニア手術では、「再発しなければ成功」ではありません。
再発せず、痛みや違和感も少なく、これまで通りの生活に戻れることが理想的な治療結果です。
そのためには、
- 技術認定医(ヘルニア)など客観的な資格があるか
- 症例数や経験は十分か
- 専門的に診療しているか
といった点に加え、術後の生活の質まで考えた手術を行っているかという視点も大切です。
鼠径ヘルニア手術では、「再発しないこと」だけでなく、「術後も快適に生活できること」が重要です。
私たちは、患者さんが手術後もこれまで通りの生活を送れることを目標に、一例一例丁寧に手術を行っています。
鼠径ヘルニア手術について不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。
鼠径ヘルニアは当院までご相談ください

神奈川そけいヘルニア日帰り手術クリニック 川崎武蔵小杉は、鼠径ヘルニアの治療に特化した日帰り手術専門クリニックです。腹腔鏡による低侵襲手術を標準治療とし、身体への負担を抑えながら、手術当日にご帰宅いただける体制を整えています。
執刀は、鼠径ヘルニア治療において豊富な臨床経験と学術実績を有する星野明弘院長が担当し、診断から手術、術後フォローまでを一貫して行っています。
受診予約は、お電話またはWeb予約にて承っております。
鼠径ヘルニアや鼠径部の症状でお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください。
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参考文献
1)Amid PK et al. A New Phenomenon Causing Chronic Pain After Prosthetic Repair of Abdominal Wall Hernias. Arch Surg, 2004;139:1297-1298



