なぜ同じ鼠径ヘルニア手術でも術後の痛みに差が出るのか?|専門書執筆医が解説
神奈川県川崎市にある鼠径ヘルニア専門クリニック「神奈川そけいヘルニア日帰り手術クリニック 川崎武蔵小杉」です。
患者さんから、「同じ腹腔鏡手術なのに、術後の痛みに差があるのはなぜですか?」というご質問をいただくことがあります。
実際、同じ「腹腔鏡による鼠径ヘルニア手術」であっても、術後の痛みや違和感には個人差があります。
もちろん、その違いには患者さん自身の年齢や体質、痛みの感じ方などが影響します。しかし、それだけではありません。
手術中の細かな操作や手術の質も、術後の痛みに影響すると考えられています。
今回は、鼠径ヘルニア手術後の痛みが人によって異なる理由について、できるだけ分かりやすく解説します。
術後の痛みは一つではありません
まず知っていただきたいのは、「術後の痛み」といっても、すべて同じ痛みではないということです。
例えば、
- 傷口の痛み
- 腹膜や筋肉の痛み
- 手術による炎症に伴う痛み
- 神経が刺激されることで起こる痛み
- 長期間続く慢性疼痛
など、さまざまな種類があります。そのため、「痛い」「痛くない」という結果だけではなく、どのような痛みなのかを考えることも重要です。
痛みは患者さんの体質だけで決まるわけではありません
術後の痛みには、
- 年齢
- 体格
- 痛みの感じ方の個人差
- 炎症の程度
など、患者さん自身の要因も関係します。
一方で、手術中の操作によって減らせる痛みもあります。
だからこそ、現在の鼠径ヘルニア手術では、「ヘルニアを治すこと」だけでなく、「術後の痛みをできるだけ少なくすること」も重要な目標になっています。
神経への配慮は術後の痛みに大きく関わります
鼠径部には、感覚をつかさどる神経がいくつも存在しています。
腹腔鏡手術では、これらの神経を十分に理解し、できるだけ刺激や損傷を避けながら手術を進めることが重要です。
神経を不用意に触れたり、熱による影響を与えたりすると、術後の痛みや違和感の原因になる可能性があります。
そのため、神経の走行を意識しながら、一つひとつの操作を丁寧に行うことが重要だと考えています。
必要以上に剥離しないことも大切です
手術では、ヘルニアを修復するために組織を剥離する必要があります。
しかし、剥離は広ければ良いというものではありません。
必要以上に組織へダメージを与えると、炎症や術後の痛みにつながる可能性があります。
一方で、剥離が不十分では安全で確実なヘルニア修復ができません。
つまり、必要な範囲を、必要なだけ、丁寧に剥離することが重要になります。
この判断には、解剖学的な知識だけでなく、多くの症例経験に基づいた状況判断も求められます。
出血をさせない手術や丁寧な止血も術後の回復に影響します
まず重要なのは、適切な剥離層を維持し、不必要な出血をできるだけ起こさないことです。
出血が少なければ術野が見やすくなり、より正確な手術操作につながります。さらに、出血を減らすことは、術後の血腫や炎症を抑え、結果として術後の痛みや回復にも良い影響を与えると考えられています。
手術中には、小さな血管から出血することがあります。
少量の出血であっても、術後に血液がたまることで炎症や違和感の原因になることがあります。
そのため、出血した場所を一つひとつ確認し、確実に止血することも重要な手術操作の一つです。
患者さんには見えない部分ですが、このような積み重ねが術後の回復につながります。
メッシュをどのように展開するかも重要です
現在の腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術では、ヘルニアを補強するためにメッシュを使用します。
しかし重要なのは、メッシュを入れることではなく、適切に展開することです。
メッシュにしわや折れ曲がりが残ると、違和感や慢性疼痛の原因になる可能性があります。
そのため私は、メッシュが腹膜前腔で鼠径部の凹凸に密着するように広がり、十分な範囲を覆っていることを細かく確認しています。
この内容については、別の記事「鼠径ヘルニア手術で本当に大切なのは再発率だけではない|術後の慢性疼痛と手術の質の関係」でも詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
手術時間が短いほど良い手術とは限りません
患者さんの中には、「手術時間が短い先生ほど上手なのでは?」と思われる方もいらっしゃいます。もちろん、無駄のない手術は重要です。
しかし、安全確認や止血確認、神経への配慮、メッシュの展開などを丁寧に行うためには、ある程度の時間が必要です。
重要なのは手術時間そのものではなく、必要な確認を省略せず、一つひとつの操作を丁寧に行うことだと考えています。
私が手術で最も大切にしていること
私は20年以上にわたり鼠径ヘルニア診療に携わり、これまで3500件以上の鼠径ヘルニア手術に関わってきました。
また、内視鏡外科学会技術認定医(ヘルニア)として診療を行うとともに、『おさえておきたい腹腔鏡下鼠径部ヘルニア修復術のすべて』の執筆にも携わりました。
専門書の執筆や若い外科医への手術指導を通して、一つひとつの手術操作には必ず理由があり、その積み重ねが手術の質を左右することを改めて実感しています。
手術を教える立場になると、
「なぜその操作を行うのか」
「なぜその位置まで剥離するのか」
「なぜその位置にメッシュを展開するのか」
といった一つひとつの操作に、明確な理由を説明する必要があります。
私はその経験を通じて、手術の質とは特別な技術だけで決まるものではなく、患者さんには見えない細かな配慮の積み重ねによって生まれるものだと考えています。
私自身が最も大切にしているのは、「手術が無事に終わること」ではなく、「患者さんが手術を受けたことを忘れるくらい快適な日常生活に戻れること」です。
そのために、神経への配慮、出血させない手技、丁寧な止血、適切なメッシュ展開など、一つひとつの手術操作を大切にしています。
まとめ
同じ腹腔鏡による鼠径ヘルニア手術でも、術後の痛みには患者さん自身の要因だけでなく、手術中の細かな操作も影響すると考えられています。
もちろん、どれだけ丁寧に手術を行っても、術後の痛みを完全にゼロにすることはできません。
- 神経への配慮
- 組織へのダメージを最小限にすること
- 出血させない確実な手術操作
- 丁寧な止血
- 適切なメッシュ展開
これらのうち、どれか一つだけが重要というわけではありません。
神経への配慮、適切な剥離、出血を抑える手術、丁寧な止血、メッシュの展開など、一つひとつの小さな積み重ねが術後の痛みや違和感を左右すると考えています。
当院では、「ヘルニアを治すこと」だけでなく、「手術後も快適な生活を送っていただくこと」を目標に、一例一例丁寧な手術を心がけています。
鼠径ヘルニアは当院までご相談ください

神奈川そけいヘルニア日帰り手術クリニック 川崎武蔵小杉は、鼠径ヘルニアの治療に特化した日帰り手術専門クリニックです。腹腔鏡による低侵襲手術を標準治療とし、身体への負担を抑えながら、手術当日にご帰宅いただける体制を整えています。
執刀は、鼠径ヘルニア治療において豊富な臨床経験と学術実績を有する星野明弘院長が担当し、診断から手術、術後フォローまでを一貫して行っています。
受診予約は、お電話またはWeb予約にて承っております。
鼠径ヘルニアや鼠径部の症状でお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください。



