痛くない鼠径ヘルニアも手術は必要?専門書執筆医が解説
神奈川県川崎市にある鼠径ヘルニア専門クリニック「神奈川そけいヘルニア日帰り手術クリニック 川崎武蔵小杉」です。
鼠径ヘルニア、いわゆる脱腸と診断された患者さんから、
「痛みがないので、このまま様子を見てもよいですか?」
「膨らみはありますが、痛くないので手術はまだ必要ないですか?」
「痛くなってから手術を考えればよいのでしょうか?」
というご質問をよくいただきます。
実際、鼠径ヘルニアは初期には痛みがないことも少なくありません。立ったときだけ足の付け根が膨らむ、寝ると戻る、押すと戻る、違和感はあるけれど日常生活には大きな支障がない、という状態の方も多くいらっしゃいます。
そのため、「痛くないなら、まだ大丈夫」と考える方も多いと思います。
しかし、痛みがないからといって、必ずしも放置してよいとは限りません。
鼠径ヘルニアは自然に治る病気ではなく、根本的な治療は手術になります。ただし、痛みがない鼠径ヘルニアのすべてが、すぐに手術を受けなければならないというわけでもありません。
大切なのは、現在のヘルニアの状態、膨らみの大きさ、生活への影響、年齢や持病、仕事や運動の状況などを確認したうえで、手術が必要か、いつ受けるのがよいかを考えることです。
今回は、痛くない鼠径ヘルニアでも手術が必要なのか、放置するとどうなるのか、どのような場合に受診や手術を考えた方がよいのかについて、専門書執筆医の立場からわかりやすく解説します。
痛くない鼠径ヘルニアは珍しくありません
鼠径ヘルニアというと、「痛みがある病気」と思われる方もいますが、実際には痛みがほとんどない方も少なくありません。
特に初期の鼠径ヘルニアでは、
- 立ったときだけ足の付け根が膨らむ
- 寝ると膨らみが戻る
- 手で押すと戻る
- 痛みはないが違和感がある
- 夕方や運動後に膨らみが目立つ
- 重いものを持ったときに張る感じがする
といった症状で気づくことがあります。
痛みがない場合、患者さんご自身も「本当に病気なのかな」「手術までする必要があるのかな」と迷いやすくなります。
しかし、鼠径ヘルニアは痛みの強さだけで重症度を判断できる病気ではありません。
痛みがなくても、膨らみが大きくなっている場合や、戻りにくくなっている場合、生活の中で不安が出ている場合には、治療を考えるタイミングになることがあります。
痛みがない=治っている、ではありません
鼠径ヘルニアは、腹壁の弱い部分から腸や脂肪などが飛び出してくる病気です。
立ったときに膨らみ、寝ると戻る場合でも、それは「治っている」のではなく、飛び出していた腸や脂肪が一時的にお腹の中に戻っている状態です。
一度できた出口が、薬や湿布、筋力トレーニング、サポーターなどで完全に閉じることはありません。
サポーターで一時的に膨らみを抑えられることはありますが、鼠径ヘルニアそのものを根本的に治しているわけではありません。
痛みがなくても、鼠径ヘルニアが自然に治るわけではありません。
そのため、痛みがない場合でも、「治ったから大丈夫」と自己判断せず、一度診察で状態を確認することが大切です。
痛くない鼠径ヘルニアを放置するとどうなる?
痛くない鼠径ヘルニアを放置した場合、すぐに大きな問題が起こるとは限りません。
しかし、時間の経過とともに変化が出てくることがあります。
膨らみが大きくなることがあります
鼠径ヘルニアは、放置しているうちに少しずつ膨らみが大きくなることがあります。
最初は小さな膨らみだったものが、次第に目立つようになったり、下腹部から陰嚢の方まで下がってきたりすることがあります。
膨らみが大きくなると、見た目が気になるだけでなく、歩行時や立ち仕事のときに違和感が出やすくなることがあります。
また、大きくなった鼠径ヘルニアでは、手術の際に剥離範囲が広くなったり、術後の腫れや違和感が長引いたりすることもあります。
違和感や痛みが出てくることがあります
最初は痛みがなくても、時間が経つと違和感や痛みが出てくることがあります。
特に、
- 長時間立っている
- 重いものを持つ
- 歩く時間が長い
- 運動をする
- 咳やくしゃみをする
- 夕方まで活動する
といった場面で、膨らみや違和感が強くなることがあります。
痛みが出てから受診することもできますが、症状が強くなってからでは、仕事や生活の予定に合わせて手術時期を選びにくくなることもあります。
生活への制限が出ることがあります
痛みがない鼠径ヘルニアでも、患者さんによっては生活への影響が出てきます。
例えば、
- 運動を控えるようになった
- 旅行や出張が心配になった
- 重いものを持つ仕事が不安になった
- 膨らみが気になって外出しにくい
- いつ悪化するか不安がある
という方もいます。
このような場合、痛みがなくても、すでに生活の質に影響が出ていると考えられます。
痛みがなくても、生活に制限や不安が出ている場合は、手術を考えるタイミングです。
まれに嵌頓を起こすことがあります
鼠径ヘルニアで特に注意が必要なのが、嵌頓です。
嵌頓とは、飛び出した腸などが戻らなくなってしまう状態です。腸の血流が悪くなると、緊急手術が必要になることがあります。
嵌頓はすべての患者さんに起こるわけではありませんが、知っておくべき危険な状態です。
次のような症状がある場合は注意が必要です。
- 膨らみが押しても戻らない
- 急に強い痛みが出た
- 膨らみが硬くなった
- 吐き気や嘔吐がある
- お腹が張る
- 膨らみの部分が赤い、または色が悪い
- 発熱を伴う
押しても戻らない、急に強い痛みが出た、吐き気や嘔吐がある場合は、早急な受診が必要です。
普段と違う症状がある場合は、通常の予約診療を待たず、早めに医療機関へ相談してください。
痛くなってから手術すればよい?
「痛くなってから手術すればよいのでは?」と考える方もいます。
確かに、痛みが出てからでも手術できる場合はあります。
しかし、痛みが出るまで待つことが、必ずしもよい選択とは限りません。
痛みが出てから手術を考える場合、
- 仕事を急に休まなければならない
- 旅行や出張の予定を変更する必要がある
- 症状が強くなって不安が増える
- 手術時期を選びにくくなる
- ヘルニアが大きくなっていることがある
といった問題が出ることがあります。
一方で、痛みがない段階で相談しておくと、現在の状態を確認したうえで、仕事や生活の予定に合わせて手術時期を考えやすくなります。
早く相談することと、すぐ手術することは違います。
診察を受けたからといって、その場で必ず手術を決めなければならないわけではありません。
まずは状態を確認し、手術が必要かどうか、必要な場合はいつ受けるのがよいかを相談することが大切です。
痛くない場合、すぐ手術しなくてもよいことはある?
痛みがない鼠径ヘルニアの場合、すべての患者さんがすぐに手術を受けなければならないわけではありません。
ヘルニアが小さく、痛みや違和感がなく、日常生活に支障がない場合には、すぐに手術を決めず、経過を見ながら手術時期を相談することもあります。
ただし、経過を見る場合でも、自己判断で長期間放置するのはおすすめしません。
診察では、
- 本当に鼠径ヘルニアなのか
- 膨らみの大きさ
- 戻りやすさ
- 左右どちらにあるのか
- 両側にないか
- 痛みや違和感の有無
- 仕事や生活への影響
- 年齢や持病
- 全身麻酔が可能か
などを確認します。
そのうえで、すぐに手術を考えた方がよいのか、しばらく経過を見ながら手術時期を考えてよいのかを判断します。
痛みがない鼠径ヘルニアでは、すぐに手術を決めるのではなく、まず状態を確認して、手術の必要性と時期を相談することが大切です。
手術を考えた方がよい痛くない鼠径ヘルニア
痛みがない場合でも、次のような場合は手術を前向きに考えるタイミングです。
- 以前より膨らみが大きくなってきた
- 立つと明らかに膨らむ
- 押すと戻るが、またすぐ出てくる
- 寝ないと戻りにくくなってきた
- 夕方や仕事後に違和感がある
- 重いものを持つ仕事をしている
- 運動や旅行を控えるようになった
- 膨らみが気になって不安がある
- 両側の鼠径ヘルニアが疑われる
- 高齢で、今後の体力低下が心配
- 仕事の都合に合わせて計画的に治したい
このような場合、痛みがなくても、手術を考える意味があります。
特に、仕事や生活に影響が出ている場合や、膨らみが大きくなっている場合には、早めに相談しておくと安心です。
高齢の方の痛くない鼠径ヘルニア
高齢の方でも、痛みがない鼠径ヘルニアで悩まれる方は多くいらっしゃいます。
「痛くないから年齢的に手術しなくてもよいのでは」と考える方もいますが、年齢だけで手術の必要性を判断するわけではありません。
高齢の方では、
- 心臓や肺の病気
- 糖尿病
- 抗血栓薬の内服
- 体力の低下
- 認知機能
- ご家族のサポート体制
などを慎重に確認する必要があります。
一方で、痛みがないうちに状態を確認しておくことで、体力がある時期に計画的に手術を検討できる場合もあります。
年齢だけを理由に手術を諦める必要はありませんが、安全性を第一に考えた判断が大切です。
サポーターや筋トレで治りますか?
鼠径ヘルニアに対して、サポーターやヘルニアバンドを使用される方もいます。
サポーターで一時的に膨らみを抑えられることはありますが、鼠径ヘルニアそのものを治す治療ではありません。
また、腹筋を鍛えれば治ると考える方もいますが、筋力トレーニングでヘルニアの出口が閉じるわけではありません。
むしろ、強い腹圧がかかる運動によって、膨らみや違和感が強くなることもあります。
鼠径ヘルニアを根本的に治す方法は手術です。
サポーターや運動で様子を見ている方も、一度診察で状態を確認しておくことをおすすめします。
当院での考え方
私は20年以上にわたり鼠径ヘルニア診療に携わり、これまで3500件以上の鼠径ヘルニア手術に関わってきました。
また、内視鏡外科学会技術認定医(ヘルニア)として診療を行うとともに、『おさえておきたい腹腔鏡下鼠径部ヘルニア修復術のすべて』の執筆にも携わりました。
その経験から感じるのは、痛みがない鼠径ヘルニアでも、患者さんによって適切な対応は異なるということです。
すぐに手術を考えた方がよい方もいれば、まず状態を確認し、仕事や生活の予定に合わせて手術時期を相談する方もいます。
大切なのは、「痛くないから大丈夫」と自己判断で放置するのではなく、現在の状態を正しく把握することです。
当院では、膨らみの大きさ、戻りやすさ、生活への影響、年齢や持病、仕事の内容などを確認したうえで、手術が必要か、いつ受けるのがよいかを一緒に考えています。
よくある質問
Q. 痛くない鼠径ヘルニアは放置しても大丈夫ですか?
痛みがないからといって、必ずしも放置してよいとは限りません。
鼠径ヘルニアは自然に治る病気ではなく、時間とともに膨らみが大きくなったり、違和感が出たりすることがあります。
痛みがない場合でも、一度診察を受けて現在の状態を確認することをおすすめします。
Q. 痛みが出てから手術しても間に合いますか?
痛みが出てからでも手術できることはあります。
ただし、痛みが出るまで待つことが最善とは限りません。
症状が軽いうちに相談することで、仕事や生活の予定に合わせて、計画的に手術時期を決めやすくなります。
Q. サポーターで治りますか?
サポーターで一時的に膨らみを抑えられることはありますが、鼠径ヘルニアそのものが治るわけではありません。
根本的な治療は手術です。
Q. 筋トレで鼠径ヘルニアは治りますか?
筋トレで鼠径ヘルニアの出口が閉じることはありません。
腹圧がかかる運動によって、膨らみや違和感が強くなることもあります。
運動を続けてよいか不安な場合は、診察で相談してください。
Q. 痛くない場合でも腹腔鏡手術はできますか?
痛みの有無だけで術式を決めるわけではありません。
ヘルニアの大きさ、左右差、持病、全身麻酔が可能かどうかなどを確認したうえで判断します。
当院では、診察や検査をもとに、安全性を第一に考えて治療方針を提案しています。
Q. 高齢でも手術は受けられますか?
年齢だけで手術の可否を判断するわけではありません。
高齢の方でも、全身状態が安定していれば手術が可能な場合があります。
一方で、心臓や肺の病気、内服薬、体力、ご家族のサポート体制などを慎重に確認する必要があります。
Q. 急いで受診すべき症状はありますか?
膨らみが戻らない、急に強い痛みが出た、吐き気や嘔吐がある、膨らみが硬い、皮膚の色が悪い場合は、嵌頓の可能性があります。
このような場合は、早急な受診が必要です。
まとめ
痛くない鼠径ヘルニアは珍しくありません。
立ったときだけ膨らむ、押すと戻る、違和感だけで痛みはないという方も多くいらっしゃいます。
しかし、痛みがないからといって、鼠径ヘルニアが治っているわけではありません。
鼠径ヘルニアは自然に治る病気ではなく、根本的な治療は手術です。
一方で、痛みがない鼠径ヘルニアのすべてが、すぐに手術を受けなければならないわけでもありません。
大切なのは、
- 膨らみが大きくなっていないか
- 戻りにくくなっていないか
- 違和感や不安がないか
- 仕事や生活に影響していないか
- 嵌頓の危険がないか
- 全身状態に問題がないか
を確認し、手術の必要性や時期を考えることです。
早く相談することは、すぐ手術を受けることではありません。
痛くない鼠径ヘルニアでも、膨らみがある、以前より大きくなっている、仕事や生活で不安がある場合は、一度診察を受けて現在の状態を確認することをおすすめします。
当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、手術の必要性や適切なタイミングを一緒に考えています。
診察を受けたからといって、その場で必ず手術を決めなければならないわけではありません。
痛くない鼠径ヘルニアをこのまま様子見してよいか迷っている方は、一度ご相談ください。
鼠径ヘルニアは当院までご相談ください

神奈川そけいヘルニア日帰り手術クリニック 川崎武蔵小杉は、鼠径ヘルニアの治療に特化した日帰り手術専門クリニックです。腹腔鏡による低侵襲手術を標準治療とし、身体への負担を抑えながら、手術当日にご帰宅いただける体制を整えています。
執刀は、鼠径ヘルニア治療において豊富な臨床経験と学術実績を有する星野明弘院長が担当し、診断から手術、術後フォローまでを一貫して行っています。
受診予約は、お電話またはWeb予約にて承っております。
鼠径ヘルニアや鼠径部の症状でお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください。



